スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

クサミズキ

先日の石垣島旅行で、書店に立ち寄ると「奄美大島の絶滅危惧植物」という本が目にとまりました。購入してパラパラとめくっていると、クサミズキの変種であるワダツミノキについての記載がありました。

奄美の絶滅危惧植物/南方新社/著者:山下弘
「果実は紫黒色に熟し、悪臭がある。」「絶滅危惧の主要因:道路工事、土地造成、薬用採取」
(最近クサミズキの変種とされた、奄美大島自生のワダツミノキについての説明として)

この本でも果実に悪臭があることになっていますが、クサミズキの果実には特段強い臭いはありません。葉を千切ったりもんだりしても草の匂いがするだけです。ミズキ(水木)に似ていて、開花時に強いガス漏れのような臭いがするため「臭水木」というわけです。実際にこの植物を見た人は少ないでしょうし、ましてや花を見た人はもっと少ないので、誤った説明が訂正されないのでしょう。

それはともかくとして、薬用採取が絶滅の要因とされてしまっています。ワダツミノキやクサミズキが薬用として片っ端から採取されているというのです。同様な記述は次の本でも見られます。

レッドデータプランツ/山と渓谷社/解説:横田昌嗣
「もともと個体数と自生地が少ないうえ、制ガン剤成分を高濃度に含有することが近年になって知られるようになり、薬用の栽培と採集で個体数が急減している。」


採集で個体数が減るという表現は解りますが、栽培で減るというのはどういう意味でしょう。自生している木を掘り上げて持って行ってしまったという意味でしょうか。草本植物なら、掘って持って行って株分けで増やすからだろう・・と解釈出来るのですが、結構大きくなる樹木ですから、この文の解釈に苦しみます。

この本のような調査内容を踏まえて、沖縄県では県内のレッドデータ植物を選定し、その保全対策について資料をまとめています。
www3.pref.okinawa.jp/site/contents/attach/11149/06-shokubutu.pdf
この資料には次のような記載があります。

「減少の要因:もともと個体数と自生地が限られている。自生地の開発。薬用の採集。」
「保全対策: 生育地の保全。御嶽林など可能な限り保存する。増殖による利用の啓発。」
「執筆者名: 新里孝和・伊波善勇」


やはり薬用の採集が減少の一因とされて、それを踏まえて、増殖による利用の啓発を行うことになっています。


以前の記事でも紹介しましたが、クサミズキにはカンプトテシンというアルカロイドが含まれていて、DNAの複製を阻害する強い活性があります。この活性を利用して開発されたのがカンプトテシン製剤で、広く世界中で制癌剤として販売されています。そして、この制癌剤を開発し生産しているのがヤクルト本社です。もし薬用の採集で絶滅しそうだというなら、それはヤクルト本社が犯人ということになります。それとも、民間薬としての利用が多いのでしょうか。

まず製薬のための利用についてですが、世界中の需要に対して安定供給することが製薬会社の大きな任務となります。クサミズキの野生植物は「少ない」などというレベルでは無く、探しまわっても滅多に見つかりません。そのような野生植物を探しまわっていて、世界的な需要を賄うことが出来るのでしょうか。という訳で、これは現実には有り得ない話です。

実際の原料カンプトテシン生産は、下の写真のように、畑で栽培されたクサミズキからの抽出によっています。
クサミズキ畑

育苗施設でタネを播いて苗を育て、数年間、畑で栽培したものを収穫(樹木なので「切り倒して」)抽出材料とします(下の写真)。
収穫

しばらくすると切り株から数本の「ひこ生え」が出るので、これをまた数年かけて大きく育て収穫します。この繰り返しで、1本の苗から3回程度収穫出来るのだそうです。この畑は広大で、自生植物を採取しただけでは、需要を満たすことなど出来ないことが直ぐに判ります。県から啓発などされなくても、薬を安定に供給するためには、ここまでやるのが常識です。

ならば、民間療法で頻繁に使われるのでしょうか。これも有り得ない話だと考えています。「健康に良い」という程度の「薬用」であればともかくとして、ガンの治療を民間薬に頼る人は少ないでしょうし、カンプトテシンの強い毒性を考えると、百害あって一利無しです。素人が聞きかじりの知識で使いこなせるような植物ではありません。もっとも、「薬用」と聞いただけで有り難がって、自生植物を探して持ち帰る人が沢山いるのかも知れませんが・・。

一般的に「薬用植物」と聞くと、民間療法的な利用方法を思い浮かべる人が多いのです。つまり、薬草の達人がいて、深山に分け入って希少な野生の植物を掘り取り、薬缶で煎じて飲むようなイメージです。恐らく、先に挙げた本の著者や編者達もそのようなイメージで、「薬用に使えるらしい。だから数が減ってしまうのだ」と想像してしまったのでしょう。一口に「薬用」と言っても、煎じ薬として使うものから、クサミズキのように成分を抽出・精製し、さらに化学的修飾を経て、やっと使えるようになるものまであります。植物の研究者は薬学方面には疎いことが多いので、このような一般的に信じられているような「イメージ」による誤解が生じるものと思われます。ニオイについてもそうですが、何故、著者達は本当のことを確認もせずに本や資料を書いてしまうのでしょうか? 

石垣島に関して言えば、野生のクサミズキは海岸林に生育していることが多いようです。海岸沿いの道路に面した林は、リゾートホテルや各種商業施設、別荘用地として伐採されることが多く、このような開発に伴って個体数を減らしている可能性が高いものと思われます。6年程前に確認した野生株の自生地は、既にすぐ隣まで宅地造成が進んでいましたから、もう伐採されてしまったかも知れません。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleプロフィールsidetitle

conocono

Author:conocono
花好きおじさんの園芸と植物に関するあれこれ。
たまに作り話もあるので要注意。

sidetitle最近の記事sidetitle
sidetitleカテゴリーsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleメールフォームsidetitle

名前:
メール:
件名:
本文:

sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitleブログ内検索sidetitle
sidetitleリンクsidetitle
sidetitleRSSフィードsidetitle
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。